マジェスティS Gstone GTシリーズ 12×32T ローギア取り付け
ボアアップ後はずっとGstoneのハイギアを使用していたのですが、特性を加速に振った場合にどれくらい向上が見込めるか確認するため、同じくGstoneのローギアを取り付けてみることにしました。
パッケージ
前回購入したハイギア(14×32T)と同じで一次ギア圧入済みのGTシリーズです。純正ギアを流用するGSシリーズよりも軽量になります。
国内代理店はアトラスで品番は「TA-GST-MT125」です。台湾のChao Chia Gearが製造しています。マジェスティS以外では、シグナスXやグリファス等のヤマハ系スクーターでローギアからハイギアまで様々なギア比のラインナップがあります。
同梱物
ギア本体と保証書が付属します。ローギアであると判別できる”12×32″の刻印があります。
総減速比の計算について
マジェスティS用に出ているGstoneのギア比は三種類になりますが、それぞれの仕様を確認してみます。各数字はギアの歯数を表しており、マジェスティSは一般的なスクーターと同様に、一次と二次の二回に分けて減速する構造になっています。
ローギア:一次13×45、二次12×32
標準ギア:一次13×45、二次13×33
ハイギア:一次13×45、二次14×32
減速比を表す計算式は以下になります。
駆動される側の歯数 ÷ 駆動側の歯数(クランクに近い方)= 減速比
一次側は固定なので減速比は以下になります。駆動される側が1回転するのに駆動する側は3.46153846回転必要という意味です。
45 ÷ 13 = 3.46153846
二次側の減速比はそれぞれ以下になります。
ローギア:32 ÷ 12 = 2.66666667
標準ギア:33 ÷ 13 = 2.53846154
ハイギア:32 ÷ 14 = 2.28571429
総減速比を出すには一次側と二次側を掛け算します。
ローギア:3.46153846 × 2.66666667 = 9.230769238205128
標準ギア:3.46153846 × 2.53846154 = 8.786982249940828
ハイギア:3.46153846 × 2.28571429 = 7.912087923406593
計算上のパーセンテージ差は以下です。
ローギア:標準ギアに比べ5.0505051181512%ローギア(約5.05%)
ハイギア:標準ギアに比べ11.0576921667668%ローギア(約11.06%)
今回はハイギアからローギアに変更なので以下になります。
ハイギアに比べ、16.66666659375%ローギア(約16.67%)
取り付け
交換は前回のハイギアと同様です。ガスケットは新品交換し、一次側についているサークリップはハイギアから移植します。新しくサークリップを用意したい場合も純正品番で購入可能です。
ギアオイルと丸山モリブデン
ギアオイルヤマルーブの純正ギアオイルを使用。今回は添加剤として丸山モリブデンのEX1000(京阪商会モデル)を10%添加しました。こちらはエンジンオイル用です。丸山モリブデンのファイナルギア用にはベースパワーGXという別ラインナップがありますが、自己責任で使用しています。ギア用はエンジン用よりもモリブデンの濃度が濃いようです。ギアオイル全容量220ccのうち22cc。わかりやすいようにスケールを使って重さを量るようにしています。22×0.9(比重)=19.8g。フリクションロスによる走行性能向上というよりは、ギアとベアリング保護の目的で使用しています。
エンジンオイル交換にも使用しているオイラー。ギアオイルと容器の色(ギア:緑、エンジン:赤、ガソリン:青)を分けて使っています。じょうごよりも汚れずに注入できるのでおすすめです。
セッティングについて
全開時の変速回転数は100~150回転くらい上がっています。ウエイトローラーのセッティングは、ハイギアと組み合わせて使用していたドクタープーリーのウエイトローラー7.0g×6個の範囲内に収まりました。7.5g×6個では回転数が下がりすぎてパワーバンドから外れます。aRacerの燃調もオートチューンベースで再度取り直しました。ギア交換前後のマップを比較してもほとんど差は見られませんが、使う回転域も若干変わるので念のためです。
ハイギアとローギアの比較
まず第一にゼロ発進の加速は体感上で大きく向上します。0-100km/hのデータを見ると、発進加速の向上によりハイギアを使用していた時よりも良好な結果が出ています。直近のデータでわかりやすい比較データを持ってきました。気温も同じ位でセッティングもほぼ一緒です。
※厳密に言うと、気温や駆動系の状態でタイムや変速の傾向に大きなブレが出るので、直近データを使った参考情報になります。
左がハイギア、右がローギアです。ローギアに変更すると半クラッチの回転数が上がり、クラッチが完全に繋がるタイミングが0.5秒程早くなっています(赤の縦線部分)。あくまで完全に繋がるタイミングが表示上0.5秒速いのであって、トータルタイムが0.5秒速くなるわけではないです。
次に、aRacerのログから抽出したデータで比較してみます。上段がハイギア、下段がローギアです。
・10km/h毎のタイム(秒)
・0km/hから各km/hのタイム(秒)
aRacerログのデータとスマホアプリのデータ「Acceleration Report」では0-100km/hの結果が異なり、トータルタイムの差は小さくなっています。10km/h毎のデータは各キロ数でぴったりでログに残っていないのでざっくりになりますが、60km/hまではローギアの方が優勢で、その後は差が無い結果となりました。クラッチが完全に繋がった後の回転数も若干異なるため、実質0発進から40~60km/h程度までであればローギアの効果がありますが、その後はプーリー側でギア比の調整が行われるので大きな差が出ないのではと考えます。
今回は0-100km/hでの比較ですが、ローギアはプーリーの変速が低い速度域で終了するため、100km/h以上の高速側は早い段階でセンタースプリングによるベルトの側圧が高まり、ロスが大きくなってくるはずです。最高速域の加速性能についてはデータ比較していませんが、体感上の伸びはハイギアより悪い感じがします。
燃費について
ハイギアからローギアに交換するとエンジンブレーキの効きがかなり強くなります。スロットルOFF時に進む距離が短くなるため、燃費への悪影響が出ると考えられます。高速道路の100km/h巡航時の回転数はハイギアとほとんど変わりありませんでしたが、プーリーの変速はより高速側に移動しているため、ベルト側圧によるロスも影響ありそうです。
最高速について
だいたいメーター読みで130km/h以上になると伸びが厳しくなってきます。変速しきると回転数が更に上がって最高速は更に伸び、aRacerのログ上では148km/hまで確認しましたが、11,300回転以上回っており危険だったので限界までは確認できていません。
※最高速テストを再度実施して記事の最後に追記
総評
単純に~60km/h程度までの加速を向上させたい場合ローギアは有効です。峠の上りとかで低速域の加速を頻繁に行うケースでは恩恵が出てくるとは思います。ですが、0-100km/hで0.2~0.3秒程度の向上なので、期待していたよりも効果は小さかったというのが正直なところです。ミッション車でスプロケを交換したようなギア毎に加速性能が向上する大きな変化はありません。デメリットとして、エンジンブレーキの効きが強くギクシャク感が出て乗りにくさが気になります。また、燃費の悪化と最高速も低下するので高速を使うようなツーリングにはやはり向きません。
※一応、私のメイン用途はキャンプツーリングです
2023年10月22日追記
駆動系のセッティングを変更、ウインドシールドを装着し、30秒間程度の最高速テストを再度行いました。aRacerログ上の最高速は153km/h、メーター表示ははっきり覚えていないのですが、145km/h位出ていたと思います。伏せておらず猫背気味のフォームだけでこの速度が出ましたので、ウインドシールドの効果が高いことが再確認できました。ジャパンスピードのプーリーと組み合わせていますが、ローギアでも最高速は以外と出たなという感じです。
2024年5月12日追記
下り勾配でメーター読み150km/hを記録。